皆さんこんにちは!
昨日、パンダに関する質問や疑問点があったら連絡くださいと
書いたところ、早速質問をいただきました。
「パンダが絶滅危惧種なのは知っているけど、何故?」
「絶滅危惧種と言われてから時間が経つのに何故増えないの?」
「妊娠から出産まで時間がかかるの?」
「環境破壊が原因って聞くけど、国を挙げて自然保護は出来ないの?」
現時点で理解している範囲でお答えしたいと思います。
まず、パンダが何故絶滅危惧種なのかということなのですが、
パンダはもともと800万年前から生息しているのですが、もともとは
肉食だったことをご存じですか?
肉食なのに草食に移行していったのには様々な説があり、「動物を
追いかけるには動きが鈍くて捕まえられなくなったから」とか
「氷河期に大半の動物が消え、竹や笹しか食べるものがなくなったから」とか
色々言われていますが、これといって答えは見つかっていません。
しかも、パンダは現在主に竹や笹や筍を食べて生きていますが、
今でも身体は肉食動物のままで、食べているものの大半は
排泄されて吸収されないため、効率もとても悪いのです。
これだけのお金と時間をかけてパンダについての研究は行われていますが、
人間にとって彼らはいまだに謎だらけの動物なのです。
1980年代に、パンダの住む森で竹が一斉に枯れてしまいました。
竹は通常何10種類もあって、その種によって枯れるタイミングが
ずれるのですが、たまたまその時期パンダが好んで食べる竹が
一斉に枯れてしまったのです。それによりパンダが餓死する事態が
起き、弱ったパンダを救済するために成都パンダ繁殖育成研究基地が設立されました。
もともと限られた場所でしか生きられないパンダは、食べ物を失い、
急激に頭数を1000頭前後まで減らしてしまったのです。
現在、野生のパンダは1600頭ほどまで回復しています。
また、人間の手によって飼育されているパンダも300以上います。
そういう意味では、一時期の危機的状況より少しは改善されているのですが、
それでも再び非常事態がおきた場合、
急激に減ってしまう危険性と常に隣り合わせなのです。
人間の手により森林が伐採され、縄張り意識の強いパンダは
住む場所を奪われていきました。快適な環境ではないからといって
パンダは高速や道を渡って簡単に他の森林に移動していくことが
できません。森が無くなる=パンダが減るということなのです。
数が劇的に増えないのにも様々な事情があります。
パンダはもともと超未熟児として生まれてくるため、
野生の場合例え双子が生まれたとしてもお母さんパンダは1頭しか
育てません。2頭同時に育てていたら、自分が食事をしたり生きていくために
しなければならないことが出来なくなってしまうからです。
目も見えない、耳も聞こえない、自力で体温調節が出来ない
赤ちゃんを育てるために母親パンダは自分のことは後回しにしながら
必死に育てます。それでも野生の場合、例えば蛇や虫に噛まれて
死んでしまったり、厳しい自然の中で生きていく中で沢山のリスクを
背負っているのです。
またパンダの繁殖にも多くの問題があります。
パンダの雄と雌の相性は大きな原因の一つです。
限られた頭数の中で繁殖を繰り返していくには、
近親交配にならないために様々な注意が必要なのですが、
たまたま相性が悪ければ自然繁殖には至りません。
自然繁殖が難しい場合には人工授精によって繁殖が
行われますが、そこにも相性があるようで、人工授精=100%妊娠には
至りません。例えば、中国以外の国では限られた頭数のパンダしか
いませんが、相性が合わないからといってすぐに別のパンダと
交換出来るわけではないため、海外の他のパンダの
精子を凍結させて運んで繁殖に利用したりもするようです。
人間のように妊娠期間が決まっているわけでもなく、
妊娠したとしてもお腹が大きくなるわけでもなく(超未熟児として生まれるため)
常に人間が観察を続けることでしか妊娠を把握することが出来ません。
また、飼育下にいるパンダは、繁殖の方法を知る術を知らないそうです。
実際の交尾シーンをビデオで見せたり、地道な努力によってしか
増やしていくことが出来ないのです。嘘のような現実です。
パンダの妊娠期間は通常3カ月から5カ月と言われていますが、
それも個体差があり、絶対にこうという答えがありません。
現在中国ではパンダを繁殖・飼育し、野生に帰していくプロジェクトもありますが、
帰す森が減ってしまっていては帰したとしてもすぐに死んでしまいます。
パンダを増やしていくには繁殖と飼育により頭数を増やし、その上で
自然を守り、広げていく努力を人間がしなければなりません。
少しはパンダについて理解していただけましたか?
明日からまた成都パンダ繁殖基地での研修に入ります。
また質問がありましたらメッセージを送ってください。
せっかくの機会に、皆さんにもパンダについて興味を持って
いただき、多くの事実を知っていただきたいと思います。
それでは、また明日!
明日はパンダの写真とパンダの飼育体験をご報告出来ると思います。
(インターネットアクセスに問題がなければ、ですが)
Pambassador Yumiko Kajiwara